今の時期、どんな花粉が飛んでいる? 黄砂やPM2.5との関係についてもチェック
眼科医 村山耕一郎 先生

監修
眼科医 村山耕一郎 先生

埼玉県富士見市の鶴瀬村山眼科院長。アレルギーやドライアイ、白内障・緑内障などのあらゆる目の病気を治療している。日本眼科学会認定眼科専門医、日本眼科学会 専門研修指導医。埼玉医科大学眼科客員教授、千葉大学眼科非常勤講師として医療の発展のためにも活動。

これまで花粉症と縁がなかった人も、毎年春が来る度に「今年は、花粉症デビューしてしまうかも?」とドキドキしてしまうものですよね。花粉症は特定の植物の花粉に対するアレルギー反応で、もし発症してしまったときは、まず「自分がどんな花粉のアレルギーなのか」を把握することが重要です。この記事では「いつ、どんな花粉が飛んでいるか」を見ていきながら、気になる黄砂やPM2.5との関係についてもチェックしていきましょう。

花粉症を引き起こす原因と、飛ぶ時期について

花粉症は、スギやヒノキなどの植物の花粉が原因となるアレルギーです。主な症状は、くしゃみ・鼻水など。現在、日本人の約4割近くが花粉症といわれています。
スギやヒノキの花粉のほかにもアレルギーを引き起こす花粉は多数存在し、飛散時期はそれぞれ異なります。どんな花粉がアレルギーを引き起こし、いつ頃飛散するのか、最初に簡単に紹介します。
くしゃみをこらえる女性

花粉症の原因となる花粉は約60種類

日本において、花粉症を引き起こす植物の種類は約60種ほど確認されています。最もよく知られているスギのほかにも、ヒノキやブタクサ、シラカバ、イネ、ヨモギなどが代表的です。
ちなみに花粉は春だけ飛散するものと思われがちですが、実はスギの飛散時期が春であるに過ぎず、アレルギーを引き起こす可能性のある花粉は、1年を通じて飛散しています。そのため近年では「春の病気」ではなく「通年病」と認識されつつあります。

花粉が飛ぶ時期の目安

代表的なスギの花粉は2〜4月、ヒノキ花粉は3〜5月、ブタクサ花粉は8〜10月に飛散します。それ以外にも、シラカバは4〜6月、イネ科は4~11月、ヨモギは8〜10月など。
こうして見ると、花粉はほぼ1年中飛んでいることがわかりますね。

今の時期の花粉はどれ? 特徴&症状をチェック

植物の種類によって、花粉の飛散時期が異なるだけでなく飛散距離やアレルギーの症状は異なります。具体的にどのような違いがあるのか、植物ごとにみていきましょう。

日本の代表的なアレルギー「スギ」

生育本数が多く、さらに1本から飛散する花粉量が多いことから、日本人の花粉症の原因としてよく知られています。さらに飛散距離が数十kmと長いため、ごくわずかな飛散量の北海道・沖縄を除き、ほぼ全国で発症例が見られます。
症状としてはアレルギー性鼻炎のほか、目、のど、皮膚がかゆくなるなどの症状が知られています。
スギ花粉が飛散する様子

スギよりやや遅れて花粉が飛散する「ヒノキ」

スギと同じく飛散距離が長いことから、こちらも広範囲で発症例が見られます。スギ花粉症と合わせてヒノキ花粉症を患っている人も多く、その場合は重症化しやすいといわれています。代表的な症状はスギ花粉症とほぼ同じです。

北海道ではスギより脅威? 「シラカバ」

北海道ではスギやヒノキの花粉症症例が少ない代わりに、シラカバ花粉症の患者が年々増加傾向にあるとされています。主な症状は、鼻水、目のかゆみ、くしゃみなど。
またアレルゲンとなる花粉のたんぱく質と果物に含まれるたんぱく質の性質がよく似ているため、シラカバ花粉症患者は同時に果物を食べると口内がかゆくなる口腔アレルギー症候群を起こすことがあります。
<シラカバ花粉症の人が口腔アレルギー症候群を起こしやすい果物>
リンゴ、モモ、サクランボ、キウイフルーツなど。

道端や荒れ地によく生息する「ブタクサ」

日本ではスギ、ヒノキに次いで多い花粉症の原因です。しかし木ではなく草なので背が低く、また花粉の飛散距離が短いため、近づかなければ避けられます。早朝など風の強い時間帯は集中して花粉が飛ぶため、散歩やジョギングの際は注意しましょう。症状としては鼻水や目のかゆみを生ずるほか、喘息の原因にもなります。

小麦アレルギーにも要注意の「イネ科」

イネ科花粉の飛散距離は100mほどと短いのですが、よく通る道の近くに水田がある場合などは注意が必要です。また稲刈りの時期は、イネについた花粉が舞い上がるため、秋は特に注意しましょう。
鼻水や目のかゆみといった症状に加え、花粉の飛散時期はイネ花粉のたんぱく質と性質が似ている、小麦の食物アレルギーを発症しやすくなることもあるため気をつけましょう。

繁殖力が旺盛「ヨモギ」

その繁殖力の強さから生育面積が非常に広く、その分花粉の飛散量も多いとされているヨモギ。粒が比較的小さいため、吸い込むと気管支まで入り込んでしまい、もともと喘息のある場合は症状を悪化させる原因となる場合もあります。
またヨモギ花粉のたんぱく質と性質がよく似たメロン、スイカ、セロリ、ニンジンの食物アレルギーにも注意が必要です。

花粉症になったときの対処法

花粉症になってしまったり、花粉症のような症状が出たりした時には、まずは医療機関を受診しましょう。原因となる花粉が分かったら、病院での処方薬を始め、自分でもできる対処法を心掛けることで、症状緩和を期待できますよ。

医療機関を受診して、検査や薬を処方してもらう

くしゃみや鼻水、目のかゆみといった花粉症的な症状があるけれど、原因がはっきりしない場合や血のつながった家族にアレルギー歴がある場合は、なるべく早めに医療機関を受診しましょう。
受診先は内科や耳鼻科、眼科、アレルギー科などを受診して血液検査を受け、花粉症と診断されたら花粉が大量に飛散する前から薬を飲み始めておくことをお勧めします。

市販薬で対処する

近年では花粉症の症状を緩和する市販薬が多く販売されています。内服薬だけでなく、点眼薬や点鼻薬もあるので、継続しやすいタイプを選びましょう。
一部の花粉症向け市販薬には眠気が出やすいものもあり、車の運転などに注意を促しているものもありますので、まずは登録販売者や薬剤師に確認してから購入するようにしましょう。

花粉を物理的に遠ざける工夫をする

雑草などの花粉症では、できるだけ対象の花粉が飛散している場所に近づかないことが一番の対処法です。またスギやヒノキの飛散時期には飛散情報を見ながら外出時はマスクやメガネを着用するなど、花粉を防御する服装を心がけることも効果的。
さらに花粉を払いやすいナイロン製の上着を身につける、洗濯物を外に干さないようにするなど、家に花粉を入れないように工夫しつつ、こまめに掃除を行うことも十分な抑止になります。
マスクをしてクッションの花粉を払う女性

花粉症が悪化する? 黄砂やPM2.5との気になる関係

近頃「黄砂やPM2.5と花粉が重なることで、より症状が重篤になる」という不安なニュースを耳にします。では具体的にどのように症状が悪化するのか、またそれを避けるためにはどんな手段があるのか、最後に紹介します。

黄砂とは偏西風で飛んでくる砂やほこり

黄砂は、中国内陸部やモンゴルの砂漠地帯・黄土地帯から吹き上げられた多量の砂やちりが、偏西風にのって飛んできたものです。主成分は二酸化ケイ素や酸化アルミニウムですが、日本へ飛んで来る間に、そこへ大気汚染成分やカビ、細菌といったアレルギーの素が付着します。
特に黄砂は花粉よりも粒子が細かく、吸い込むと肺の末端まで入ってしまうことから、花粉症をより重症化させる懸念があるとされています。

PM2.5とは大気汚染物質

PM2.5とは直径が2.5μm(マイクロメートル)以下の非常に小さい大気汚染物質です。成分としては炭素、硝酸塩、硫酸塩などのほか、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどの無機元素など。その小ささのため、吸い込むと気管支の奥まで入り込み、気管支炎などを引き起こす原因となります。
さらに炎症部位に花粉などのアレルギー原因物質が付着することで、花粉症もあわせて引き起こしてしまいます。
街に黄砂が舞っている様子

黄砂&PM2.5対策は、花粉症とほぼ同じ

うがい・手洗い・洗顔を徹底した上で、微粒子が付着しにくいナイロン製の上着を着用し、家に入る前に微粒子をできる限り払いましょう。また洗濯物はなるべく部屋干しにし、可能な限り窓を開けないようにしつつ、室内では空気清浄機を十分に活用しましょう。

今の時期に飛んでいる花粉を把握して、対策しよう!

くしゃみや鼻水、鼻づまりなど、花粉症のような症状がある人は、まずは医療機関で原因を特定させましょう。何の花粉に対してアレルギーがあるのか分かったら、処方薬や市販薬で症状を緩和したり、花粉症対策をして、できるだけひどくならないように工夫することが大切です。
また、春は花粉症状を悪化させる可能性もあるとされる黄砂やPM2.5も飛んできやすい時期。症状悪化を防ぐためにも、できるだけ家に取り込まないよう、心掛けてくださいね。
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